患者に寄り添う多職種連携のチーム医療
注目を集めている
「在宅医療」とは?
在宅医療とは、一人での通院が困難な患者に対して自宅や施設などを訪問して行う医療のことです。高齢化が進む中、入院医療や外来医療に次ぐ「第3の医療」として注目を集めています。在宅医療で対応できる内容としては、診察や治療に加え、薬の処方、注射や点滴薬剤の投与、各種検査、カテーテル管理、がん緩和ケアなどが挙げられます。医療費や薬代は医療保険が適用されるため、負担割合も同じです。また、月の負担が自己負担限度額を超えた場合は、申請すれば後日払い戻される「高額療養費制度」も同様に利用することが可能です。
一般的に医師が患者の自宅や施設などに出向いて行う診療は、訪問診療と往診の二つに分けられます。訪問診療とは、あらかじめ立てた計画にもとづいて定期的に訪問して行う診療を指し、一方の往診とは、患者からの依頼があった時や容体が急変したときなど臨時で訪問して行う診療のことです。なお在宅医療では、医師をはじめ、訪問看護師や薬剤師、栄養士、理学療法士などの医療関係者がチームとなって対応していくため、医師による診療の他、看護師による訪問看護や理学療法士による訪問リハビリテーションなども、在宅医療に含まれます。
在宅医療の対象患者と
医療機関を探す方法
在宅医療は、「寝たきり」や「自力での歩行が困難」などの原因により、一人で医療機関に通うことが難しい患者が対象となります。通院が困難であれば、年齢や病気の種類などに関係なく、在宅医療を受けることができますが、逆に一人で通院できる状態であれば、在宅医療を希望しても受けることはできません。
また、在宅医療を受けるには医療機関の立地条件が重要になってきます。訪問診療を行える範囲は原則としてその医療機関から16㎞以内のエリアと定められているため、在宅医療を受けるにはこの距離内で探す必要があります。近年、24時間体制をとる「在宅療養支援診療所」など、在宅医療を行う医療機関が増えつつある一方で「在宅医療における普及率の地域差」が問題視されています。在宅医療を行う医師は、都市部には比較的多くいるものの都市近郊や地方などでは容易に見つけられない地域もあります。そのためまずは、かかりつけ医に相談したり、入院中の方は「医療ソーシャルワーカー」などが在籍し社会福祉の立場から患者やその家族のサポートを行っている院内の地域医療連携室などで相談すると良いでしょう。その他に地域の窓口として、市区町村役所の介護保険担当窓口や介護支援事業者、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター、保健所、各地の医師会など様々な場所で相談できる体制が整ってきています。
在宅医療を行う前に!
必ず把握しておきたい特徴
在宅医療は「住み慣れた環境で療養できる」ことが大きな利点です。長い入院生活が続く場合、家族や友人から離れて普段と違った環境で過ごすことになりますが、在宅医療の場合は、自宅など慣れた環境でリラックスして療養することができ、また通院にかかる負担を軽減できます。
ただし、住み慣れた環境で療養できるというメリットがある反面、「家族のサポート」が重要となってきます。在宅医療では、食事や服薬の世話、病状によっては医療的なケアなど、様々な面で家族の手助けが必要となります。また患者が安全に過ごせるように、場合によっては階段に手すりをつけたり電動ベッドを用意したりと、住環境を整える必要もあります。更に緊急時に備えて医師と連携できる体制を整えたり、介護サービスを受ける場合は介護マネジャーとの連携をとることも必要になってきます。
家族が無理をして体調を崩し生活に支障をきたすと、在宅医療が成り立たなくなる可能性があるため、できるだけ周囲と協力できる体制をつくり、抱え込まないことが在宅医療を成功させるための大事なポイントといえるでしょう。
ますます高まる
在宅医療へのニーズ
自分らしい暮らしを続けながら、療養が受けられる在宅医療。医療技術や医療機器の進歩により、自宅などの日常生活の場においても、入院時と同じような医療が受けられるようになってきています。
2000年に介護保険制度が導入され、高齢者の介護や療養を支えるための環境づくりが進められてきたことで、在宅医療の環境が整ってきました。更に、団塊の世代が後期高齢者へと移行する、いわゆる「2025年問題」が目前に迫ってきており、ますます在宅医療へのニーズが高まることが見込まれます。
在宅医療を受けるかどうかを決める際は、患者本人の意思に加え、家族の心構えも必要となります。在宅医療の特徴をよく理解した上で役割分担なども含めて、しっかりと家庭内で検討することが大切です。そして十分に話し合った上で納得できる道を選択し、より良い医療が受けられる体制を目指していきましょう。
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