進化する手術!高度な手技で症状改善を図る
治療の低侵襲化で日帰りや
短期滞在手術が可能に
耳や鼻は、健康的な日常生活を送る上で重要な器官です。この器官に何らかの障害が起きると「音がよく聞こえない」「息苦しくて眠れない」など、他者とのコミュニケーション力や生活の質(QOL)を低下させる要因ともなってしまいます。このような症状を扱う耳鼻咽喉科では、近年めざましい医療技術の発展により、治療の低侵襲化が進み日帰りや短期滞在で治療が受けられるようになっています。
低侵襲な内視鏡下手術で
耳や鼻の慢性疾患を改善
内視鏡下で行われている代表的な疾患として挙げられるのが、慢性副鼻腔炎と慢性中耳炎です。
慢性副鼻腔炎とは俗にいう蓄膿症(ちくのうしょう)です。主に風邪のウイルスや細菌感染などをきっかけとなり、副鼻腔内の粘膜が炎症を起こして腫れたり、ドロドロとした粘りのある黄色い鼻水が出て、鼻から喉へ大量の鼻水が垂れるなどの後鼻漏(こうびろう)を引き起こしたりします。このような症状が4週間以内の場合を急性副鼻腔炎といい、3か月以上続いている状態が慢性副鼻腔炎です。悪化すると鼻茸(鼻ポリープ)や嗅覚障害が出ることがあります。その不快感は大きく、鼻づまりによって集中力の低下や睡眠障害を招くこともあり、長期投薬によって改善が見られない場合は手術を検討します。従来の手術は、上顎の歯肉に切開を加えて骨を露出させるのが一般的で、痛みが強く、頬がしびれることもありました。現在行われている内視鏡下副鼻腔手術では、内視鏡によって鼻腔と副鼻腔の間の空気の通り道を広げるため、大がかりな切開が必要ありません。出血や痛みも少なく、日帰りでの手術も可能です。
慢性中耳炎とは、急性中耳炎の繰り返しや外傷などによって、鼓膜に穴が開いたままになっている状態です。細菌に感染しやすいため耳だれを繰り返し、耳鳴りや難聴も引き起こします。放置すると難聴が進行する可能性もあり、必要に応じて手術を行います。内視鏡下で行う鼓室形成術や鼓膜形成術なども普及し、日帰りあるいは数日間の入院で手術を受けることが可能になりました。また聴力改善についても、従来の手術と比べて成績が向上しています。
子どもに多い中耳炎も
日帰り手術が可能に
子どもに多い疾患が、急性中耳炎と滲出性中耳炎です。急性中耳炎とは、耳の鼓膜の奥にある中耳に細菌やウイルスが入り込んで感染し、炎症を起こす病気です。ズキズキと脈打つような強い耳の痛み、発熱、耳だれなどが主な症状で、たまった膿や分泌物を吸引除去し、抗生剤などによる治療を行います。
滲出性中耳炎とは、中耳に浸出液がたまる中耳炎です。痛みや腫れを起こすことはほぼないものの、難聴や言語発達遅延などを引き起こす可能性があるため、適切な治療をすることが必要です。急性中耳炎を繰り返す場合や、鼓膜切開を行っても滲出性中耳炎が改善しない場合に行われるのが、鼓膜チューブ留置術です。鼓膜チューブ留置術とは、鼓膜の一部を切開して小型チューブを挿入し、一定期間、滲出液の排出を促し続ける治療法です。麻酔後、手術にかかる時間は2~5分ほど。日帰りで受けることができます。
短期滞在手術が普及し、仕事や学業が忙しく、手術を躊躇していた方も手術を受けやすい環境が整ってきました。ただし安全性の高い短期滞在手術を実現するには、さまざまな設備や高度な医療技術が必要となるため、専門の医療機関へ相談するとよいでしょう。
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