失われた機能を回復させる高度な微小外科手術
日常生活で酷使する手指
女性に多い手の不調
手指は、日常生活において使用頻度の高くて最も怪我の多い部位です。肘から上の手指は、日常生活で特によく使うだけに、つい痛みを我慢しがちです。指の第1関節が腫れて痛むヘパーデン結節、母指の付け根の痛みと変形をきたす母指CM関節症などは、40歳以降の女性に多く進行すると日常生活の様々な場面で支障をきたしてきます。変形性関節症は加齢とともに、骨と骨の間でクッションの役割をしている軟骨がすり減って痛みが生じる病気です。女性ホルモンの関与もありますが、スポーツや作業などで手指の関節を酷使している人は、発症が早まることがあります。
また、刃物や機械などの外傷により、指が完全に切り離された状態を、切断指といいます。また、ほぼ切り離されているものの、皮膚や腱などで、かろうじてつながっている状態を、不全切断指といいます。指が切断されると、皮膚や骨はもちろんのこと、血管や神経、腱なども切断されます。血管や神経同士をつながなければ壊死が起き、感覚麻痺などの後遺症リスクもあります。ところが、直径0・5㎜から3㎜ほどの、極めて細い指先の血管や神経を縫合することは、従来の技術では困難でした。また、手は細やかな作業を行うため、高度に分化した組織であり、複雑な構造や機能が十分に明らかになっていませんでした。
マイクロサージャリーで
緻密な手技を可能に
手指は人の日常生活に必要不可欠な部位で、繊細な動きをするために鋭敏な感覚が備わっている感覚器官でもあります。「手外科」は整形外科の中でも、主に肘から手指までのケガや病気を専門に治療します。
手指の手術には手術用のルーペや顕微鏡を使う高度なマイクロサージャリーという技術を用います。マイクロサージャリーとは、マイクロ(微小)とサージャリー(外科)という意味で、手術用双眼顕微鏡を使って、1㎜以下の微小な血管や神経、リンパ管をつなぐとても繊細な手術です。血管や神経の縫合だけでなく、手指や爪の再建などを行うこともあります。
症状が進行する前に診察を
専門医がいる医療施設が望ましい
ヘパーデン結節の変形が強い場合は関節固定術や関節形成術が有効な場合があります。投薬治療による保存療法が効かない場合や変形が進むと、手術により関節の形成やスクリューを使った固定を行います。術後、固定した第1関節は動かなくなりますが、二番目の関節が正常に動いていれば、痛みなく指が動かせるようになり日常生活はとても楽になります。母指CM関節症では、ペットボトルやビンのふたを開ける時などに親指の付け根に痛みが出ます。症状が進行すると親指のつけ根の関節(母指CM関節)が変形して開きづらくなります。変形が進行した場合の手術は関節固定術と関節形成術があります。関節固定術は痛みの出ている親指の付け根の関節(CM関節)をスクリューで固定する方法で、痛みはなくなりますが、関節を固定するので親指を閉じるのが難しくなります。関節形成術は、痛みの原因となっている骨を摘出し、第1中手骨を人工のひもで第2中手骨につり上げます。握力が低下することがありますが、関節の動きを保てるため、指先を使うような細かな作業をする方に適しています。
手は皮膚、骨、関節、靭帯、筋肉、腱、神経、血管などから緻密に構成されています。このため、手のケガや病気を治療するには、専門的な知識と技術を身に付けた手外科医が診断、治療を行うことが求められます。細かい作業から力仕事まで、日常生活でも特によく使う手指は、マイクロサージャリーの高度な医療技術を持つ手外科専門医のいる医療施設で治療や手術を受けることが望ましいでしょう。
Page
Top