傷跡が目立たない!高度な内視鏡下手術
女性に多い胆石症
脂肪分の取りすぎに注意
胆石とは、胆汁に含まれる成分が凝縮され結晶化したもので、その約8割を胆嚢にできる胆嚢結石が占めています。胆石症は40歳以上の女性に多く見られますが、加齢とともに女性ホルモンの低下が進み、代謝が悪くなることで胆石ができやすくなると言われています。
胆石症になっても2~3割の人は無症状で、人間ドッグや他の病気で超音波検査(腹部エコー)を受けたときに、偶然発覚するケースがほとんどです。胆石症に見られる主な症状としては、右の肋骨の下やみぞおち付近に感じる激しい痛み、また右肩や背中の痛み、腰痛などが挙げられます。これらの痛みは、食後に出ることが多く、悪化して炎症すると発熱や黄疸、肝機能障害を引き起こすこともあるため手術が検討されます。
小切開で傷跡が目立たず
入院期間も3~5日と短縮
従来、開腹して胆嚢ごと摘出する胆嚢摘出術が行われていましたが、約10~15㎝切開するため1~2週間の入院を要し、身体的にも経済的にも負担が大きいものでした。しかし近年、腹腔鏡下胆嚢摘出術という身体へ負担が少ない治療法が登場し大変注目を集めています。
腹部に5㎜から10㎜の穴を計4か所開け、二酸化炭素を注入して腹部を膨らませた後、腹部に内視鏡や鉗子類を挿入し、腹腔内の状態をテレビモニターで細かく確認しながら手術を行います。手術時間は、およそ1時間。癒着があるなど状態により2時間程度かかる場合もありますが、小切開のため術後の痛みが少なく、入院期間が3~5日と早期社会復帰が可能です。また、傷口が小さく目立たないため、周囲を気にせず温泉や海に行けることも利点の一つです。短期滞在手術の普及により、仕事が忙しい方や育児や介護で長期入院が難しい方でも、治療を受けやすい環境が整ってきています。
身体への負担を軽減!整容性に優れた手術
食生活の欧米化により
増加する胆石症
近年、食生活の欧米化を背景に体の中に結石を持つ、胆石症患者が増えています。食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化・吸収を助ける消化液である胆汁が、胆石によって塞き止められると、嘔吐、腹痛、発熱などの症状が見られる胆のう炎・胆管炎を引き起こします。
胆管炎は、進行すると敗血症など重篤な状態に陥る場合があるため注意が必要です。胆管内にたまった胆汁が血液中に逆流し、黄疸の症状が見られるケースもあります。また、胆石が移動して胆のうの出口にはまり込むと、突然、右の肋骨下辺りに一定の間隔で起こる痛みや、背中や右肩にコリや痛みが生じたりします。症状が無い場合は特に治療をせずに経過観察を行いますが、炎症が生じている場合には、薬物治療や内視鏡による治療、腹腔鏡下手術による胆嚢摘出術などが行われます。腹腔鏡下胆嚢摘出術とは、おなかに約4か所の小さな穴をあけて、そこからカメラと手術器具を挿入し、カメラの映像を見ながら器具を操作して行う手術です。開腹手術に比べ、術後の痛みが軽く、入院期間も短縮されるというメリットがありますが、それでも5㎜〜12㎜の穴を複数開ける必要があるため、体に傷が残ってしまうという欠点がありました。
整容性が高い
単孔式腹腔鏡下手術
近年、急速に普及しつつあるのが単孔式腹腔鏡下手術(SILS)です。これは文字通り、体に開ける孔が一つの手術です。従来の腹腔鏡下手術の場合、胆嚢摘出術で4か所、また胃切除術や大腸切除術などでは5か所前後の孔を開けて手術しますが、単孔式腹腔鏡下手術では孔を一つだけ開けて手術を行うため傷も一つで済みます。具体的な手術方法としては臍の部分に1か所だけ穴をあけて、そこに保護するための器具を装着し、カメラと2つの手術器具を挿入していきます。従来の腹腔鏡下手術よりも侵襲が小さく、術後に腸などの組織が癒着する合併症も少なくなると考えられています。また、術後は切開創がお臍の中に隠れるので、整容性が高くほとんどわからなくなるというメリットがあります。また、術後の痛みが少ない、入院期間が短縮できる等の利点も挙げられます。
外科・消化器外科では急性虫垂炎、胆嚢摘出術などの手術に用いられることの多い単孔式腹腔鏡下手術ですが、最近では、胃や十二指腸・小腸腫瘍、大腸癌等にも手術を適応している医療機関が増えています。低侵襲なため、高齢などで開腹手術が難しい場合でも病巣を切除できる可能性もあり、今後、更なる適応範囲拡大に期待が寄せられています。
ただし、単孔式腹腔鏡下手術は通常の腹腔鏡下手術よりも難易度が高く、どんな医師でも担当できるものではありません。高い技術力を持ち、安全性に配慮できる医師と病院選びが大切です。
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