医療技術の向上!開胸しない高度な呼吸器外科手術
喫煙者は要注意!
男性死因第1位の肺がん
我が国における死因の第1位「がん」。令和5年人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、がんで約38万人が死亡しており、その中でも肺がんは最も多く、男性は約5・3万人で死因第1位、女性は約2・2万人で死因第2位となっています。
肺がんになる最大の危険因子は「喫煙」です。他にも大気汚染や有害化学物質などが挙げられますが、肺がん患者の約8割は喫煙者であることが分かっています。特に、喫煙を開始した年齢が20歳未満の場合、死亡率は非喫煙者と比較し5・5倍ともいわれており、現在喫煙歴のない肺がん患者数増加の背景として、受動喫煙の影響が考えられています。
進行しやすい肺がんの特徴
早期治療が重要
肺は、空気中から体内へ酸素を取り込み、不要となった二酸化炭素を体外へ排出する重要な役割を担っています。呼吸する際、鼻や口から吸い込んだ空気は気管を通って左右の肺に入りますが、気管が左右に枝分かれした分岐点から先を気管支といい、肺の入り口部分を「肺門」、その奥の肺門以外の本体部分を「肺野」といいます。さらに、分岐を繰り返した気管支の先端に約3億個以上もの「肺胞」という袋状の組織があり、この肺胞を取り囲む毛細血管との間で酸素と二酸化炭素を交換しています。
肺がんは、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の2つに大きく分けられ、肺がん全体の約10〜15%が小細胞肺がん、85〜90%が非小細胞肺がんといわれています。また、がん細胞の形や大きさなどの違いにより、小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんと、4つの組織型に分類され、特徴や発生しやすい部位が異なります。
肺門や肺野に発生しやすい小細胞がんは、増殖スピードが速くて転移しやすいのが特徴で、喫煙との関連が大きく、かなり進行してから発見されるケースが多く見れらます。肺がんの中で最も多い腺がんは、肺野に発生しやすいがんで、増殖スピードは遅く症状が出にくいのが特徴です。肺門に発生しやすい扁平上皮がんは、咳や血痰など症状が現れやすく喫煙との関連が大きいといわれています。肺野に発生しやすい大細胞がんは、増殖が速く小細胞がんと同じ性質を示すものがある大きな細胞のがんです。
肺がんは、咳、痰、血痰、発熱、呼吸困難など風邪によく似た症状がでてきます。症状が1か月以上続いたり、胸痛や背部痛などが起こる場合は早めに検査し、状態を確認した方が良いでしょう。
肺がんの様々な治療法
高齢の方も治療可能に
治療法には、がんの患部を切除する手術療法、抗がん剤などを用いてがんの増殖を抑えたり転移や再発を防止する薬物療法、放射線を照射してがん細胞を攻撃する放射線療法などがあり、肺がんの種類やステージなどを考慮して、より適した治療法が行われます。
肺は、胸の左右に1つずつ存在しており、右肺は、上葉・中葉・下葉の3つ、左肺は上葉と下葉の2つに分かれ、右肺は、さらに10区域、そして左肺は8区域に分けることができます。手術を行う場合、がんが発生している肺葉を切除する、肺葉切除術が一般的です。他にも、肺全体を切除する肺全摘術、区分ごと切除する区域切除などが行われています。
従来行われてきた開胸手術は、大きく切開して目視で患部を確認しながら、がん細胞を取り除くため、高齢の方や持病を持つ方など受けられない場合がありました。それを軽減させたのが胸腔鏡下手術です。胸部に数か所穴を開けてカメラや手術器具を挿入し、モニターを通して2次元画像で患部を確認しながら行うことができる手術で、開胸しないため手術が難しかったケースでも適応が広がっています。
高精度なロボット支援下手術
低侵襲で合併症も軽減
さらに近年、手術支援ロボットが登場し、身体への負担を大幅に軽減できるとして注目を集めています。ロボット支援下手術では、執刀医がサージョンコンソールという操縦席に座り、ペイシェントカートから伸びる鉗子がついた3本のアームと、高画質の3次元カメラが接続された1本のアーム、計4本のアームを遠隔操作します。ハイビジョンカメラで撮影された患部を、高解像度で立体感のある3次元画像で確認しながら手術が行われますが、最大15倍という拡大視野で捉えることが可能なため、肉眼では見えないような微小血管や神経など細部まで確認することができます。また、5〜12㎜最大6カ所の切開で済むことから、出血量が極めて少なく合併症も軽減できるのが大きな利点です。
進行すると、手術ができなくなることもあるため、気になる方は早めに専門の医療機関へ相談すると良いでしょう。
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