開頭しない高精度な放射線治療で早期社会復帰を可能に

様々な脳の疾患に適応
子どもや高齢者も治療対象
 ガンマナイフとは、1968年にスウェーデンで開発されたガンマ線という放射線の一種を脳へ集中的に照射して治療する最先端の定位放射線治療装置です。主に脳腫瘍、脳動脈奇形などの血管障害、三叉神経痛やてんかん、パーキンソン病などへの治療に適用されています。
 ガンマナイフ治療は、小さな病巣をピンポイントで正確に照射できるため、病巣周囲の正常な組織を傷つける心配がありません。照射時に貫通する頭皮や骨、脳、血管、神経への影響も少なく、手術が困難な脳の深い部分や合併症の危険性が高い部位でも治療することが可能です。低侵襲で身体への負担が少ないため短期入院か、もしくは病変の状況や患者の状態によっては、数日かけて通院しながら分割照射を行うなど、日帰りで治療を受けることも可能です。また、大きな痛みや苦痛を伴わないため、これまで開頭手術や全身麻酔が体力的にも困難だった子どもや高齢の方でも治療できます。



高精度なガンマナイフ治療
治療後は歩行も可能
 ガンマナイフ治療では、焦点がズレないようにするため頭部を固定する必要があります。その際、従来、頭部へ金属製のフレームを装着してピンで固定を行っていましたが、近年は状態によりマスク固定で治療が受けられるようにもなっています。治療では、検査で撮影した画像をコンピューターに読み込み、照射範囲や線量を計算し照射していきます。治療中は痛みや不快な音などはありません。治療時間は病変の状態によって異なりますが、基本的に30分から数時間で、治療終了後は歩行や食事をすることも可能です。比較的小さな脳の病変が治療対象ですが、照射精度の向上や、分割照射の導入により、病変によっては⻑径が3㎝以上であっても状態により治療することが可能な場合もあります。ただし、ガンマナイフ治療は高精度な医療機器の完備と熟練した医師の高い技術力が必要不可欠なため、全国でも限られた一部の医療機関でのみ行われている治療法です。





定位放射線治療で、がんを切らずに治す!

通院しながら治療も可能な
注目の定位放射線治療
 がんの治療には、薬物療法や、抗がん剤治療、放射線治療、手術など様々な方法がありますが、近年、〝切らずに治す〟サイバーナイフ治療が注目されています。サイバーナイフとは、産業用ロボットを医療用に応用した定位放射線治療装置のことで、ロボットアームに装着されたX線発生装置を用いて、腫瘍にピンポイントで照射する治療です。基本的に入院は不要で、治療時間は1回30分〜60分。麻酔も必要なく、仕事をしながら通院で治療を受けることが可能です。
 これまで、主に脳腫瘍の治療として用いられてきたサイバーナイフですが、現在は脊髄や肺、肝臓、腎臓、膵臓、前立腺など、全身へ適応が拡大しています。


高精度ながん治療
保険適応も拡大へ
 サイバーナイフ治療の大きな特徴として、治療精度の高さが挙げられます。細い放射線ビームを精密に集中させ、0.5㎜以下の精度で病巣のみを狙うことができるため、周囲の正常な細胞を傷つけることがありません。そのため、周辺組織に余計なダメージを与えることなく治療を行うことができ、照射方向の自由度が高いことも、サイバーナイフ治療の特徴です。多くの方向からピンポイントで照射することができ、これまで不可能であった斜め上方からの照射も可能になりました。また治療中に患者が動いても、照射点を自動的に補正し追尾したり、また照射を中断することも出来るなど様々な安全対策が施されています。
 2016年には前立腺がん、2020年4月には直径5㎝以内の転移性脊椎腫瘍や5個以内のオリゴ転移も保険適応されています。ただし国内でサイバーナイフ治療を行っている医療機関は少なく、まだ限られています。治療を受けたい方は、設備の整った専門の医療機関に相談すると良いでしょう。





切らずに治す高精度ながん放射線治療

正常な細胞にダメージを与えない
最先端の放射線治療
 がんの治療法には、がん組織を取り除く「手術療法」と、抗がん剤を用いて治療する「化学療法」、そして病巣部へ放射線を照射してがん細胞を死滅させる「放射線療法」などがあります。手術療法は、早期治療で根治する可能性が高い治療法です。しかし、切除範囲が広いと術後に機能障害が生じる場合があるなど、身体への負担が大きいというデメリットもあります。
 近年、〝切らずに治す〟最先端治療として、放射線治療の一種である粒子線治療が注目を集めています。粒子線は、X線などの放射線とは異なり、身体の深い位置にあるがんに対し正確に放射線を照射することが可能です。そのため、効率よくピンポイントでがん細胞を攻撃しながらも、周囲にある正常な細胞に余計なダメージを与えないのが大きな特徴で、痛みがなくご高齢の方でも受けやすい治療法です。


様々ながん治療に対し
保険適応も拡大
 粒子線治療は「陽子線治療」と「重粒子線治療」の2種類があり、様々ながんに対する治療が行われています。陽子線治療は、もっとも軽い元素である水素の原子核(陽子)を加速させ、エネルギーを高めた陽子線を患部に照射する方法で、粒子が軽く360度あらゆる方向から緻密に照射することが可能です。重粒子線治療は、炭素の原子核を加速して患部に照射する方法で、放射線療法の中で最もがん細胞を破壊するパワーが強い治療法です。
 先進医療として認められている粒子線治療ですが、現在、泌尿器腫瘍や頭頸部悪性腫瘍、骨軟部腫瘍、小児腫瘍などは保険適応されています。ただし、粒子線治療を行うためには巨大な専用施設が必要なため、全国でも限られた医療機関でのみ行われている治療ですので、専門の医療機関へ相談すると良いでしょう。






多方向から高精度に集中照射
MRI搭載の新機種も登場
 現在、電気によって電子を高速に加速し、高エネルギーのX線や電子線を発生させるリニアック(直線加速器)が広く普及しています。疾患の種類や部位によって、エネルギーの強さが異なるX線や、電子線などを使い分け、病変部に対して3次元的に多方向から集中照射することができるという特徴があり、画像誘導放射線治療や強度変調放射線治療 、定位放射線治療など高精度な治療を行うことも可能です。基本的に体のほとんどの部位に対して治療が可能で、頭頸部がんをはじめ、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、転移性脳腫瘍など、幅広い疾患に適用されています。
 治療の際、事前にMRIなどの検査を行い、照射位置や線量を調整し精密な治療計画を立てますが、治療当日、がんの病巣は呼吸などに伴い動く可能性があるため、それを考慮して広めに照射する必要がありました。しかし近年、MRIが搭載された新機種が登場し、治療時にリアルタイムで患部を可視化しながら、より精密に治療することが可能になっています。そのため、身体への負担も軽減され、従来では治療が難しかった肝臓がんや膵臓がんにも適用できるようになり、注目されています。






がんの性質を利用した新治療
声を温存できる可能性も!
 放射線治療は、がんへ放射線を照射する際、周囲の正常な細胞にも放射線が当たってしまうという課題がありました。治療部位によっては影響が大きく、一度放射線治療を行った後、同じ場所に再び放射線を当てることが難しいケースも少なくありません。
 こうした課題を背景に注目されているのが、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)です。BNCTとは、アミノ酸を多く取り込む性質がある、がん細胞の性質に着目し、ホウ素と中性子を組み合わせた新しい治療法です。うがい薬や目の洗浄剤など日用品にも使われてきたホウ素と、原子核を構成する粒子の一つである中性子を、人体への影響を抑えるため、低エネルギーに調整して使用します。治療では、まずホウ素を含む専用薬剤を点滴で体内に入れて、がん細胞にホウ素を集中して取り込ませることで、選択的に反応が起こる状態にします。その後、中性子を照射すると、がん細胞内でホウ素と中性子が反応し、α線とリチウム粒子が発生。このとき生じるエネルギーは、ほぼ細胞1個分の範囲にしか届かないため、がん細胞のみが選択的に破壊される仕組みです。
 現在、切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対し、保険適用することができ、正常組織への影響が少ないことから、状態により喉頭を温存して声を失わず症状改善することも期待できます。








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